このところ山下塾には初心者から入る子が多くなった。初めてルールを知ってから上達するのに幾つかの壁がある。壁を超えるごとに上の段階に上がっていく。観ていると皆同じように壁を破る姿を見せてくれる。まずは自分のアタリに気が付く。囲碁ではいろいろな形のアタリがあるのでアタリが分かると言い切れるには、かなりの経験が必要である。相手の石にアタリをかけ、相手がもしかして見落とすのを期待する手を打つところから進んで、相手のミスを期待しなくなるのが次の壁である。囲碁は相手のミスを期待するのでなく、お互いに最善手を打ちあうゲームである、と分かると進歩が速くなる。今日の山下塾で相手のミスを期待して2手続けてアタリを打ち、相手の注意をほかに向けさせようとしているA君を見た。これは注意しなければいけない。A君は、「卑怯な手は打つな」と言っても分かってもらえない子である。「相手のミスを期待しないこと」、とだけ話した。A君が同じような手を打ったら今度は時間をかけて話さなければしけない。

JFEスチールの社内誌の取材に立ち会うことになった。先日のJFE大会で総務部の担当者と話している時に女流プロ棋士牛栄子さんは千葉市出身で、その母親の牛力力さんは千葉市在住と話していた。社内誌に千葉県の有名人を紹介する欄があり、牛力力さんを次号に取上げたい、と話が来た。牛力力さんの囲碁活動の認識が上がることなので、忙しいだろうが協力を頼んだ。記者は囲碁が全く知らないので立ち会ってもらいたいという。牛栄子さんは小学2年生から6年生まで山下塾に通っていたが、牛力力さんとは30数年前からの縁である。インタビューの中でで囲碁の魅力の一つに、「勝つ喜び、負ける悔しさを小さいうちに体験できること」と語ったのは、自身が中国棋院五段の棋士であり、牛栄子さんの母親らしい言葉、と受け止めた。中国の言葉に「虎父無犬子」(虎の父に犬の子はいない)がある。栄子君が虎になる日が待ち遠しい。

指導に行っている神明幼稚園の園児が山下塾の見学に来た。19路盤で打ったことのない子供には山下塾生が相手ではかなわない。子供の世界は遠慮がないので、碁盤上の全石が取られかねない。囲碁に興味を持っている子でも最初にそんな目に合うと遠ざかってしまいかねない。先日行われた団体戦の会場で、お姉ちゃん二人の応援に来ていた4歳のコウノスケ君が、打とうと挑戦されて13路盤で相手をした。アタリは分かるようであった。今日の見学の相手に丁度良いと思い呼んで、二人で打たせた。19路盤初めてのことながら囲碁らしく打っている。最後にダメと死に石だけ教えて地の計算になった。4歳はまだ20と40どちらが大きいかは分からないが、囲った地はどちらが大きいかは理解できる。コウノスケ君は自分の地はゼロで相手の地はいっぱいあると分かったら涙が出てきた。ぽろっときたらもう止まらない。お母さんが何とあやしても駄目である。4歳でこの悔しがり方は得難い。この子は囲碁が好きになると強くなります、とお母さんに伝えた。

若松幼稚園年長組の5回目の指導である。この幼稚園では若松幼稚園保護者囲碁の会ができてから定期的に3人のお母さんが指導の手伝いに来てくれる。そろそろ本式ルールで囲碁を教えようかと思い、そのサポーターのお母さんに意見を聞いた。まだアタリが十分理解できていない園児が多い、と言うことで次回くらいまでは石取りゲームにすることにした。いつも石取り模範ゲームを園児の前でサポート役とやってみせる。今日は「シチョウ」を石取りゲームで教えようと思い、サポートさんとの打ち合わせなしでその形を作り指導することが出来た。そろそろサポートのお母さんたちに指導のバトンタッチができるかもしれない。

S学院小アフタースクール生徒26名には囲碁文化継承の会から田邊氏と事務職のYさんが指導に加わってくれている。今日はあいにく二人とも休みである。授業については一人でできるようにテストにした。その場で採点して間違った問題は一人一人に返して、もう一度考えさせた。何人かには画板に問題を作り取り組ませた。使用している教室を囲碁使用から元の授業使用の状態に戻す後片付けは、いつもは生徒と大人3人で取り組んでいる。今回は生徒だけで出来るかと観ていたら、いつもよりきちんと、且つ早くできている。大人が手を出さずに生徒だけに任せた方が良いとは思わぬ発見である。

第15回文部科学大臣杯小中学校囲碁団体戦千葉県大会は、これまでで一番多数の38チームが参加した。市川市、柏市、船橋市からが多く、一番遠くからの参加は富津市碧堀小学校である。人口として一番多い千葉市からは1校のみである。これは、何といっても指導者の有無が原因と思われる。一方柏第4中学校は7チーム、昭和学院小は4チームがエントリ。当然のことながら囲碁に理解が深い学校からの参加が目立った。ところで、大会での山下塾生は思いのほか振るわなかった。段級位から考えて勝って当然、と思われる対局で後れを取っていた。大会ゆえ下位の者が上位の者に勝つことはよくある。やはり気合が良いと感じさせる碁を打っているチームが県代表となった。小学校は八栄小学校と市川小学校、中学校は渋谷幕張中学校と東邦中学校である。全国大会での活躍を祈る。

昨日は千葉県民の日で県内の公立学校は休みである。17日に開催される第15回文部科学大臣杯小中学校囲碁団体戦千葉県大会に向けて昨日と今日連続で特訓を行った。全国大会への代表選抜戦には山下塾生が多く参加する。小学校では参加8校のうち選手3人全員が塾生の学校が二校、選手2人が二校、選手1人が二校で、中学校では選手2人が一校ある。代表選抜戦以外の交流戦でも八校から塾生が参加している。大会前の指導碁は互先で打ち得意の布石を勉強させる。大会に向けては、、囲碁はどんな相手でも勝ち切るのは大変である、また負けが決まるまでも大変である、優勢でも油断せず、形勢不利でも諦めないこと、と話した。みな緊張する大会を力いっぱい戦うであろう。

都内唯一の私立のフリースクール中学校で「それ活」時間の囲碁に一年生の女子生徒Nちゃんが参加して今回で二回目である。先輩たちに早く追いついてもらいたいので、少し無理だが19路盤で指導した。時間が余ったので先輩のRちゃんに九子の指導碁を頼んだ。折に触れ、囲碁を学ぶと友達ができるよ、と言っているので、色々な生徒との対局が望ましい。一年先輩のRちゃんは指導碁は初めてである。私が負ければいいの?と聞いてきた。友達になるには一生懸命に打つことだよ、と教えた。初めての19路盤でNちゃんはボロボロ石を取られ、涙腺が緩み出した。それでも時々びっくりするようないい手を打つ。「おっ、きみは天才だ!、と心から褒める。何故か更に涙腺が緩んできた。あれでよかったの?とRちゃん言う。Nちゃんは今日の対局を思い出として一生覚えているよ、と話した。二人は真剣に打つごとに友情を育んでいくであろう。

薬円台小学校の囲碁クラブは船橋市立の小学校ではクラブの生徒数が一番多いのだが、これまで千葉県小学校囲碁団体戦にチームとして参加したことはない。今年は4年生になったナオト君がクラブに入ったので部員に呼び掛けたら、昨年からいる二人が手を挙げてくれた。二人で対局してもらったら、結構打てる。千葉県代表選は無理だが親睦戦ではかなり活躍すると思われる。囲碁クラブ指導は2回目ながら19路盤で序盤の打ち方を解説して何組か打たせたら終局まで打てた。今年の秋には団体戦で三組くらい参加できそうである。一度県大会に参加するとチームとして勝ち負けの面白さを感じられる。今年は県大会出場の良いきっかけになるであろう。

船橋幼稚園の玄関を入ると右手に事務所があり窓越しに受付の女性が仕事をしている。玄関で靴を脱いで上がると、この女性が席を立って玄関まで出てきて迎えてくれる。三クラスの囲碁指導を終え、お茶をご馳走になって玄関までくると、またこの女性が自席から玄関まで出てきて送ってくれる。園長の躾けか、女性自身のもてなしの行動かは分からない。毎回、この送迎を受けていると幼稚園からの囲碁指導の感謝の表れか、と思い有難くなる。仏教に無財の七施(眼施、和顔施、愛語施、身施、心施、壮座施、房舎施)がある。この女性の行動は七施の身施に当たるのであろうか。

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